建もの好き一般人による住宅建築をめぐるメモ|2021年6月〜

タテメモ

家を建てたくなったら/丹羽修|建築家による“自分のための”家づくり本

2021年6月8日

一級建築士である丹羽修さんによる著書「家を建てたくなったら」の読書レビューです。対象の読者は、家を建てることを決めつつあるけど、まだどのようにつくるのか明確なビジョンを持てていない未来の施主。建築家による家づくりの良さが詰めこまれた本書。「ハウスメーカーにお任せ」から一歩踏み出し、自分たちならではの豊かな暮らしを送るための唯一無二の家づくりのヒントが詰まっています。2015年WAVE出版発行(376ページ)。

著者の丹羽修(にわおさむ)さん

N L デザイン設計室|公式サイトより転載

WEB上にあった短めのプロフィールをひろってきました。

テレビ朝日「渡辺篤史の建もの探訪」の過去紹介物件アーカイブページです。10年以上前ですが、ご自宅兼事務所が紹介されていたようですね。

メモ

丹羽 修(にわ おさむ)
1974年生まれ。千葉県柏市出身。97年芝浦工業大学工学部建築科卒業後、建設会社・設計事務所等で経験を積み、2003年NLデザイン一級建築士事務所を設立。住宅設計を主な仕事とし、丹誠を込めて人に喜ばれる家づくりに没頭する毎日。

建もの探訪 公式サイトから転載

 

 

本書の冒頭にこうあります。

自分たちの理想の家に住むことを、あきらめないでほしい。
人と人との関係を大切にする家づくりを、知ってほしい。

建築家との家づくりの良さを広げたいという意思。そして、級建築士という自らの仕事への強烈な自負を感じますね。もちろん私は建築家に依頼して家づくりをするつもりなのですが、やはりまだ個人として“建築家に依頼する”ことは、少数派なんですね。

私自身、実際にさまざまな建築事務所を訪れて建築家の方と話していても、それは感じます。
直接そのようなことを仰るかたもいますし、そうでなくてもこちら側の不安や知識の不足を先回りしてフォローするように会話を進める方が多いように感じます。

話はそれましたが、数多いる“建ものファン”の一人として、一件でも多くの魅力的な建ものがこの世の中に増えることを願ってやみません。

 

書籍「家を建てたくなったら」について

2015年8月にWAVE出版から発行されたソフトカバーの書籍です。ページ数は大ボリュームの376ページ!
とは言え、写真やイラスト、そして軽妙な文体ゆえか、するすると読み進めることができます。集中して読めば、2〜3時間程度で読み終わるボリューム感です。
私は、夜中にお酒をチビチビいただきながら、あっちこっちに手をだしながら、それでも3日間ほどで読み終えました。

巻頭には、ハウスメーカーに頼む場合などの典型的な間取りと、著者である丹羽修さん自らが設計した住宅の間取りが、カラーで見比べられる折り込み付録がついています。裏面には、間取り検討の経過が時系列でわかるイラスト。

住宅は三次元、目で見て手足で触れ中で生活してこそものなので、こういった工夫とサービスは嬉しいですね。

そして巻末には丹羽修さんが活用されている住宅調書(の一部)が数ページにわたり収録されています。

住宅調書とは、建築家のもとを訪れた施主(発注者)に記入してもらうヒアリングシートです。こんなことまで住宅のプランニングに必要あるのかというものも含め、微に入り細に入り事細かな項目が並んでいます。

施主と建築家は、単なる受発注だけの関係ではない。こういった調書の取り交わしや幾度にもわたる打ち合わせを通じて、より深く心を通わせていくことが、最終的にできあがる住宅の満足度につながっていく。そうしたことを本書は伝えようとしているかもしれません。

以下、本書を読んで気になった&勉強になった項目をピックアップして紹介します。

 

 

これまで住んだの家を振り返る

新しく住まいを作るときには、過去の住まいを振り返ることがスタートになる。

これはなるほどなと思いました。もちろん私は、今住んでいる住居や、それ以前に自分自身で選んできた数々(7箇所!)の住居のことを思い出しながら未来について考えます。
ですが、ここに書かれているのは、生まれ育った家(つまり自分の好みや条件に応じて決定した家だけでなく、ともすれば仕方なく住んでいたような“与えられた家”)について思いを巡らすことが重要であるということです。

生まれてから住んだ家や、思春期を過ごした部屋。そういった自らの家の履歴書を振り返ることが、これから建てる家の5年後10年後20年後をイメージするときの、大きなヒントになるかもしれない。確かにそうかもしれません。

家族の形態も時とともに変わってきますし、ライフスタイルも世の中の環境も変わっていきます。それでも変わらないのは人と人との関わり合いの大事さや、ここをの通った家族の絆です。良いことも悪いこともひっくるめて、自分自身の住宅に対する思いがどこからやってくるのかを見つめ直す時間が必要なのかもしれません。

かくいう私は、生まれてから小学校一年生までは社宅(戸建て)住まい。その後、ハウスメーカーの建てた新築住宅に移り住みました。その時に感じた広い子供部屋や二段ベッドへの興奮は今も覚えていますが、思春期には三人兄弟(姉私妹)ならではの部屋割り問題にモヤモヤしました。さらに大学入学に伴う一人暮らしの開始と、その後の頻繁な引っ越し遍歴。

こんな平凡な私でも、物語のひとつでも書けてしまうのではないかと勘違いさせるほどのエピソードと気持ちの浮き沈みがあるわけです。

そのひとつひとつを掬い上げていくことが、これから長らく暮らすことになる住宅のプランニングの糧となると考えるのは、道理に叶ったことのように思えます。

屋根(庇)について

一転して、具体的な内容です。

著者は自らのを特別なこだわりのない建築家だと言いますが、唯一のこだわりは「屋根」だといいます。屋根は住宅にとってとても重要で、日差しや空気のコントロールにとても重要な役割を果たすとのこと。

特に大事なのは庇(ひさし)。建ものから張り出した屋根、つまり庇によって夏は直射日光がカットされ、冬は暖かい光を屋内に招き入れることができる。さらに庇があることによって外壁に直射日光があたるのを避けることができ、その結果として劣化スピードを落とすことができる。

住宅にとっての屋根とは、雨風を避けるためだけのものではなく、ほかにも多くの機能と役割をもった重要なパーツなんですね。

予算の考え方(土地はできるだけ安く買う!)

この部分は、施主と建築事務所とで考え方に差があるところかもしれません。

著者の主張は、「土地はできるだけ安く買うことが大事」です。

その意図は、一般的な不動産評価に紐づく土地の特徴は、さまざまな建築的な工夫によって良くも悪くもできるということです。例えば極端に狭かったり変な形だったり日当たりが悪そうだったりといった、土地の価格が低くなってしまいがちな条件でも、建築家の手にかかればまったく問題なく希望通りの家が建てられる可能性があるという主張です。
それよりも、100万円でも200万円でも建もの自体の建築にかけられる予算を増やして欲しい。それが理想の暮らしを叶えることにつながるはずだ。そう著者はいいます。

言いたいことはわかりますが、少しばかり論理の飛躍や考えたいたっていない部分もあるように私は感じました。

人は住宅の中だけで生活するわけではありませんし、住宅自体の満足感さえ得られれば家族全員が心穏やかに毎日を過ごせるわけではありません。むしろ、地域コミュニティーや社会全体の中での人間関係が人生トータルの満足度向上に影響をあたることも多いです。さらに、その地所を相続や売却する可能性もあります。

もちろん主張をわかりやすくするための誇張もあるのでしょうが、こうした住宅の外にある土地選びがもたらす観点への言及がなかった点には、少々物足りなさを感じました。

コストを下げるポイント

バッサリ切り捨てる覚悟

これに尽きるという話です。一番よくないのは「とりあえず」という判断基準。「とりあえず収納多めに」「とりあえず車は2台とめられるように」「とりあえずトイレは2つ」こういった本当に必要かどうかわからない「とりあえず」をひとつひとつつぶしていくことが、満足度を損なうことのないコストダウンにつながっていくという内容です。

本当にそうだと思います。ですが、多くの人にとって一生で最大の買い物である新築プロジェクト。絶対に失敗したくない、後で後悔はしたくない、と考えるのは自然なことです。しかも自分たちのことであっても5年後10年後の状況は正確に予測できるものではありません。一般的に「あると便利」とされているものは、「とりあえず確保しておきたい」と思うのは当然です。

わかっちゃいるけど... ということなのですが、ここでしっかり腹をくくって判断していけるかがプロジェクトの成否を分けるポイントなのかもしれません。

正直言って、自信がありません。笑

 

おしまい

もともとの読者ターゲットである、住宅を購入することは決めたけど、まだどのように購入するのか判断がつかないような方にはとても有意義な書籍だと思います。
私のような住宅フリークにとっては既知の情報がほとんどでしたが、一緒にプロジェクトを進めるパートナー(家族や親族)に対する説明や説得するのに役立つ情報が整理されていて、とても参考になりました。“必読”とはまではいえませんが、誰にとっても読んで損はない一冊だと感じました。

発行元 WAVE出版 
発行日 2015年8月8日
価 格 1600円(税別)

 

 

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