ツレヅレハナコさん、「食と酒と旅を愛する文筆家」を標榜するグルメライターです。一人暮らしの40代女性である彼女が、都内に戸建て住宅を建てることを思い立ってから、実際に完成しそこで暮らし始めるまでの記録が、「女ひとり、家を建てる」として出版されています。テキストはもちろん、写真や間取り図も掲載されていて、キッチンにこだわって家を建てる人は、一読して損はないでしょう。
INDEX
ツレヅレハナコさんとは
ツレヅレハナコさん、大人気ですね。
食、さらに食と酒をテーマにするメディアからの引き合いが絶えない印象です。ターゲットの性別はどちらもいけてる様子ですが、特に女性からの指示はかなり厚いものがありそう。
「女ひとり、家を建てる」掲載のプロフィールを転載します。シンプル。
メモ
フード編集者。お酒とつまみと台所道具がある場所なら、日本各地、世界各国を飛び回る。
ご自身の著書も、多数出版されています。
「女ひとりの夜つまみ」
「ツレヅレハナコの旨いもの閻魔帳」
「女ひとり、家を建てる」について
住み慣れた賃貸マンションにさよならし、43歳女ひとり、猫一匹が挑んだ、人生を自分らしく生きるための、自分だけの一戸建てづくりの記!
本書冒頭にあるこの惹句が、内容のほぼすべて。笑
レシピなども混ぜ込みながらの、もう少しグルメ情報寄りな一冊と想像していましたが、良い意味で想像を裏切られました。一般人(建築のプロではないという意味)による一般人のための、まごうことなき建築家と一緒につくる戸建住宅建築の参考書です。
とても面白いのは、立地や間取りや仕様といったハード面だけでなく、家を建てる動機やプロジェクト途中の煩悶、そして減額調整の内容や建築家とのコミュニケーションなどのソフト面についても掲載されている点です。というか、むしろソフト面の方が話題の中心です。
住み始めてからの「よかったこと」「失敗したこと」が掲載されているのもいいですね。
とにかくキッチン!とにかくサイド光!
表紙の画像に選ばれたのは、ツレヅレハナコさんがこの家で一番こだわり、「これは絶対」と実現させたキッチンとそこに差し込む“サイド光”です。ステキ。
我が家のこだわりのひとつも、ダイニング&キッチンを家でいちばん居心地のよい空間として設ることですが、ツレヅレハナコさんの希望はもっと具体的。時間軸を伴ったイメージの具現化を追求しています。
デザインのテイストや設備機能ではなく、その家で自分がみたい景色や外部との関係性を重視した家づくり。とても共感できます。
業務用厨房メーカー「タニコー」工場見学
建築好き?キッチン好き?ならよく知られているタニコー。
と言っても、あくまでも”業務用”の厨房機器メーカーなので、個人住宅に導入した事例などはあまり目にすることはありません。でもそこは名うての名うてフード編集者。面目躍如とばかりに、タニコーフルオーダーの造作キッチンをビルトイン。
そして、「せっかくなら」とタニコーの工場見学記が本書に収録されています。これがとても面白い。工業製品ではあるけれど、しっかりと人の手がかけられているんですよね。わかっているようでわかっていない。どんなものでも、それが作られた過程を目で見たモノは、大事に使わなければと思います。
キッチントップのステレンレスの厚みにまでこだわったツレヅレハナコ邸のキッチン、一度この目でみてみたいなぁ。
金銭感覚がどんどん狂っていく日々
共感しかありません。笑
我が家はマンションリノベーションを一度やっているので、今回の家づくりは2度目。それでも、家づくりの初期段階である概算見積り中の自邸プロジェクト、すでに金銭感覚が崩壊しつつあります。
1〜2万円の違いなんてあってないようなもの、数十万単位の出し入れを“勘”でやりつつ、数百万単位のプランの評価をかなり定性的に行なっています。
完全に私的なプロジェクトだからこそ成立するこの検討フロー(というかスタンス)は、ある意味で快感。でも怖い。
これから四半世紀の家族のライフプランやライフスタイル、これから半世紀の夫婦のライフプランを決定付ける重大な決断をこんな感じで決めてしまって良いのか。そうした葛藤が常に頭のどこかにあります。でも楽しい。
家づくりの醍醐味ですね。笑
おしまい
とてもおもしろいく、読みました。「家づくりは、自分が好きなことやこだわりにフォーカスしてやり切るべし」というのがこの本の教訓。「あれもこれもではなく、「ここはぜったい」というスタンス。そして割り切り。でもこれが難しい。
発行元 河出書房新社
発行日 2020年10月23日
価 格 1600円(税別)
頁 数 160ページ
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