住宅建築が好きな人なら誰もが知ってる「渡辺篤史の建もの探訪」。放送開始はなんと1989年、今年で32周年を迎える超御長寿番組です。案内役は俳優の渡辺篤史(わたなべあつし)さん。もはや“俳優の”ではなく、“建もの探訪の”という枕詞のほうがしっくりくるし、人にも「あ〜、あの!」とすぐ伝わります。私のなりたい職業、心のベストテン堂々第一位は“建もの探訪の渡辺篤史”です。
「渡辺篤史の建もの探訪」の歴史
「渡辺篤史の建もの探訪」が最初に放送されたのは1989年(平成元年)4月1日。沖縄を皮切りに、桜前線と共に北上しつつ、日本全国の名建築を訪ねる旅番組としてはじまりました。
第1回目は、沖縄・那覇の城西小学校。しぶい。
その後、1クール(3ヶ月)で終わるはずだった番組は、紹介対象を公共建築から個人住宅へと変更しながらあれよあれよと32年。今なお続く超御長寿番組として人気を博することになりました。
上の画像はテレビドガッチというWEBメディアから転載ですが、この記事によると、公共建築→個人住宅への変化は渡辺篤史さんの希望でそうなったとか。
とにもかくにも、偶然や運、そして渡辺篤史さんという稀有なキャラクターが噛み合って、このお化け番組が生まれたんですね。
放送当初から変わらないこと
番組の魅力は、30年以上にわたる放送で一貫して変わらない取材スタイル。
MCである渡辺篤史さんは、台本、下見、打ち合わせなどは一切無し! 予備情報を持たずに訪問し、放送で流れる冒頭の挨拶が施主との本当の初対面。当然ながらその後流れる住宅見学も初対面。そんなこだわりが、良くも悪くもファーストインプレッションの生々しさを伝えてくれます。
なんとなく忖度しつつも、ベースにあるのは渡辺篤史さん個人の純粋な驚きや感動、そして興味関心。そこに疑いを持たせない、持たなくてよいところが、「渡辺篤史の建もの探訪」の一番の魅力です。
最後の総括も台本無し。
遠くを見つめる潤んだ瞳。少年のような渡辺篤史さんに、魅力を感じない人がいるのでしょうか。
こちらも要チェック!
ムック「渡辺篤史の建もの探訪BOOK 25周年スペシャル版」
渡辺篤史さんについて
[渡辺篤史]と検索すると、Wikipediaより上、検索1位に建もの探訪の公式サイトが表示されます。笑
本名も同じ渡辺篤史、1947年11月28日生まれとのことなので、御年なんと73歳です。番組で見る自由闊達でのびやか(たまにひょうきん)な姿は、まだ50代くらいの印象です。身長は170cm。
出身地は茨城県下妻市。特技はボクシングとテニスで、テニスの腕前はプロ級(!?)とのことです。本当かな?
「渡辺篤史の建もの探訪」のよいところ
よいところしかないので整理するのが大変ですが、ざっくり3点。
とにかく褒める
アプローチを褒める。家族を褒める。ペットを褒める。広さを褒める。狭さを褒める。とにかく放送時間いっぱいをかけて褒めまくります。絶対に貶さないという安心感は、番組をみている私たちだけではなく、番組を迎える施主や建築家にもあるでしょう。
施主にとっては一世一代をかけた大プロジェクトである自邸建築。そんな大切なものに、テレビ番組という公共の場でちょっとケチがつけられたとしたら... そんなこと絶対に耐えられないはずです。でも、「建もの探訪」なら心配無用。渡辺篤史さんの至極の褒め芸で、放送時間は満たされます。
たまにペットや子ども関係の時間が妙に長いこともありますが(笑)、基本的には住人がこだわっただろうポイントをしっかりフォーカス。そして、クライマックスで建ものを賞賛し、そこで暮らす施主のチャレンジと今後の人生を寿いで大団円です。
住宅を建てる際の参考になる
渡辺篤史さんは、「日本の住宅がもっともっとよくなればいいと思って」番組を続けているとのこと。素晴らしい理念です。
その思いに違わず、番組内や公式サイトは、これから住宅建築に取り組もうという未来の施主に有意義な情報に満ちています。
番組内
- 冒頭で家族構成を年齢付きで紹介
- 建築エリアを紹介
- 築年、敷地面積、建築面積、延床面積を紹介
- 収納の中などディテールも紹介
- 生活導線を意識した紹介順
- 建築費(税込)、坪単価の紹介
- 間取りの紹介
- 建築事務所の紹介
パッと思いつくだけでもこの通り。さらにすごいのがWEBです。
公式サイト
- 過去19年分の紹介物件アーカイブ
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概要情報の記載(完成年月、敷地面積、建築面積、延床面積、構造、建築費、坪単価)
- ポイントをしぼったダイジェスト紹介(写真&テキスト)
- 建築家プロフィールの紹介(もちろん連絡先も)
- 「建築家のひとこと」の掲載
アーカイブはなんと2003年からあります。それ以降に紹介されたすべての物件の情報が、丁寧に保管&掲載されているのです。これに気がついた時は感動しました。番組の意志というか、良心を感じざるをえません。
これだけでも「日本の住宅を良くしたい」と語る渡辺篤史さんの言葉に嘘はないと信じられます。涙
名人芸が楽しめる
「いいですね〜」「たよりがいがある」「ちょっと失礼します」「こちらの材は」「わかりました」などなど、お決まりのセリフをあげたらキリがありません。
ほかにも
- ソファやよさそうなイスには絶対座る
- 食べられそうな植物はとりあえず食べる
- 子どもと子どもの作品(お絵かきなど)に敏感
- ネコなどペットに敏感
- 船舶照明は都度指摘
- たまに飛び出すダジャレや小芝居
- けっこう靴下の色が派手
などなど、30分の中にこれでもかと見所が詰まっています。もはや住宅自体に集中できないほど。笑
個人的には、キッチンをきた時にたまに出る「旦那さんもけっこう料理しそうですよね?」の的中率が悪すぎるのが、とても好きです。
興奮しすぎず、淡々としすぎず、なだらかな抑揚でまとめあげられる30分は、さながらソロ奏者・渡辺篤史さんを中心とした協奏曲のよう。
間に挟まる「ニッソー」CMも味わい深く、完成度が極まったTVプログラムです。水戸黄門。
「渡辺篤史の建もの探訪」で紹介された住宅
番組で紹介された住宅のうち、特に気になったいくつかを紹介しています。写真は、番組公式サイトや建築設計事務所公式サイトで紹介されているものを転載しています。記事ごとに転載元を表記しリンクを貼っていますので、ご容赦ください。
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